2025.08.07
「この一枚と暮らしたい」そう感じさせる特別な魅力を持つアートギャッベ。
手織り独特の弾力ある踏み心地と、優れた耐久性で多くの人々を魅了し続けています。
織り込まれた文様の一つ一つに込められた遊牧民の願いを知ることで、毎日の生活がより豊かになることでしょう。
運命の一枚との出会い方から、長く美しさを保つお手入れ方法まで、詳しくご紹介します。
アートギャッベは、イラン南西部ザグロス山脈の高原地帯で遊牧生活を営むカシュガイ族の女性たちによって織り続けられている手織り絨毯です。
その歴史は古く、数千年にわたって受け継がれてきたと言われています。
遊牧民たちは標高2000~3000メートルの厳しい環境で、夏は40度を超え夜は10度まで下がる過酷な大地でテント生活を営んでいます。
そんな環境で床の代わりとして使うため、毛足を長くして独特のふかふか感と弾力を生み出しています。
2010年にはその織りの技術がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的にその価値が認められました。
遊牧民の女性たちは自分たちが育てた羊の毛から糸を紡ぎ、自生する草木で色を染め、ひと編みひと編み手織りで織り上げていく伝統的な製法により、同じものは二度と作ることができない世界に一枚だけの表情を持つ絨毯を生み出しています。
ギャッベという名前の語源は、ペルシア語で「ざっくりとした」「粗い」という意味を持ち、英語の「rough」に近い言葉です。
これは精緻な宮廷絨毯とは対照的な、遊牧民の実用的な織り物としての特徴を表現しています。
手織りで織り込まれるギャッベにはまっすぐな線がありません。
織り手の女性たちは「自然を見つめなさい」というメッセージを大切にしており、自然の中にはまっすぐな線が存在しないことから、ギャッベも自由でユニークなデザインとなっています。
ひと編みひと編み織り込まれる糸には少しずつ自然な色合いの変化があり、織り手の個性が表れています。
この「ざっくりとした」特徴は現代の機械製品にはない温もりと個性を生み出し、自然な「ゆらぎ」や「グラデーション」が見る人の心を癒してくれるのです。
遊牧民たちが大切にしてきた自然との調和の精神が、一枚の絨毯に込められています。
アートギャッベの最大の魅力は、手織りならではの温もりと機械では決して再現できない自然な「ゆらぎ」にあります。
織り手である遊牧民の女性たちは、一枚のギャッベを織り上げるのに数か月もの時間をかけます。
一畳程度のサイズでも一つの季節をまたぐほどの時間をかけて、丁寧にひと編みひと編み糸を結び付けていくのです。
この長い制作過程で草木染めによる優しい色合いは、染める季節や時間によって微妙に変化し、同じ色を再現することは困難です。
織り手の気持ちの変化も作品に反映されるため、まさにその時にしか生まれない表情を持った絨毯となります。
手仕事による微妙な凹凸や色のムラは、見る角度や照明によって表情を変え、日々新しい発見をもたらしてくれる一期一会の美しさがそこにあります。
この「不完全さ」こそが完璧な美しさを生み出しています。
アートギャッベは親から子へと受け継がれることも多い優れた耐久性を誇ります。
この耐久性の秘密は、ザグロス山脈の高地で遊牧民と生活を共にする羊たちの高品質な毛と手織りの技術にあります。
厳しい環境に適応した羊の毛は羊の脂分(ラノリン)をたっぷり含み、この天然のラノリンが毛に自然な撥水性と汚れにくさを与えています。
手織りならではの踏み心地も格別で、経糸にひと編みひと編み糸を結び付ける技法により独特のふかふか感と弾力が生まれます。
足を踏み入れた瞬間に感じるやわらかく包み込まれるような感触は一度体験すると忘れられません。
ソファに座らずにラグの上で過ごすことの多い日本人の生活スタイルにも最適で、天然素材ならではの調湿効果により一年を通して快適な環境を提供してくれます。
適切なお手入れにより長期間美しさを保つことができます。
アートギャッベに織り込まれる文様には、遊牧民の深い愛情と人生への願いが込められています。
最も代表的なモチーフである「生命の木」は、大地に根を張り天空に向かって成長する樹木を表現し、子供の健やかな成長、長寿、健康への願いを象徴しています。
砂漠の厳しい環境に耐えながらも力強く成長する木々は、生命力の象徴として親から子への愛情を表現する人気の高いデザインです。
「鹿」のモチーフは家庭円満と子供の成長を願って織り込まれ、鹿が子供に寄り添って大切に子育てをする姿から、結婚する女性が嫁ぎ先での家族の円満を願って織り込むとされています。
「人」や「女性」のモチーフは基本的に「子供」を表現し、わが子への愛情と健やかな成長への願いが込められ、子供が生まれた記念や自分の子供の数だけ織り込むこともあると言われています。
アートギャッベには幸福への願いと邪悪なものから身を守る魔除けの意味を持つモチーフも織り込まれています。
「鳥」は天から幸せを運んでくる「神様からの使者」や「幸運の女神」と信じられ、「幸福」や「あこがれ」を意味する重要なシンボルです。
特に「くじゃく」は優美な姿から美しさを象徴します。「四角」のモチーフは「窓」を意味し、「窓から幸せが入ってきますように」という願いが込められ、また「水場」として砂漠で過ごす遊牧生活にとって欠かせない水源への感謝も表現しています。
「ひし形(トランジ)」はカシュガイ族のアイデンティティを表し、どの部族に属する者の作品かを示す伝統的な印です。
「横向きS(ケルマック)」は小さい虫を意味し魔除けとして、
「X」は未来永劫続く幸せを、
「ジグザグ」は水の流れへの感謝を表現しています。
「花」は自然への感謝と春へのあこがれを込めて織り込まれます。
アートギャッベ選びで最も重要なのは、直感的な「出会い」を大切にすることです。
同じものが二度と作られることのない一点物だからこそ、「この床にはこちらが似合う」ではなく、「このギャッベを使いたい」という気持ちが何より大切です。
色合いについては、草木染めで染められた自然な色彩はどのような空間にも調和しやすく、時間が経つにつれて深みを増していきます。
サイズ選びでは置きたいスペースを事前に測定し、用途に応じて適切なサイズを選びましょう。
玄関用の小さなものからリビング用の大きなものまで様々です。
ドアの開閉時にギャッベの厚みが引っかからないかも確認が必要です。
肌触りの確認は購入前に必須で、羊の脂分(ラノリン)をたっぷり含んだ毛質の良いものほどしっとりとした感触があります。
手で触るだけでなく実際に踏んでみることで独特の弾力を体感できます。
アートギャッベのお手入れは非常に簡単で、基本的には週に2回程度の掃除機がけだけで十分です。
ギャッベは目がぎゅっと詰まっているため、埃やゴミが毛足の奥まで入り込むことがありません。
掃除機をかける際は毛足の流れに沿ってゆっくりと動かし、上側から下側へ向かって丁寧にかけることでゴミをきれいに取り除けます。
汚れが付いた場合は、まずタオルで押し当てるようにして水分を吸い取り、こすらずに軽く押し当てることが重要です。
その後、中性洗剤を薄めた水で硬く絞ったタオルを使い、毛足の方向に沿って拭き取ります。最後に水拭きをして洗剤を除去し、自然乾燥させます。
ウール素材は本来汚れにくい性質を持ち、天然のラノリンが撥水効果を発揮するため、年に一度程度の専門業者クリーニングで美しさを長期間保てます。直射日光を避けて設置することも大切です。
アートギャッベが多くの人々を魅了し続ける理由は、その優れた実用性と美的価値の高さにあります。
ひと編みひと編みが手織りで作られる世界唯一の絨毯は、現代の住空間に特別な価値をもたらしてくれます。
最大の魅力は、何といってもその踏み心地の良さです。手織り独特の弾力とふかふか感は、一度体験すると忘れられない感触を提供します。
床に座ることの多い日本人の生活スタイルにも完璧にマッチし、ソファよりもギャッベの上で過ごすことを好む方も多いほどです。
天然羊毛の調湿効果により、夏は涼しく冬は暖かく、一年を通して快適な環境を保てます。
耐久性の高さも特筆すべき点です。
親から子へと受け継がれる優れた耐久性は、現代の使い捨て文化とは真逆の価値観を提示してくれます。
高品質な羊毛に含まれる天然のラノリンが汚れを防ぎ、日常的なお手入れは週2回の掃除機がけで十分という手軽さも魅力です。
色彩やデザインの美しさは、時間が経つにつれて深みを増していきます。
草木染めによる自然な色合いは、どのようなインテリアとも調和し、空間全体を上質に演出してくれます。
織り込まれた文様の意味を知ることで、毎日の生活がより豊かで意味深いものとなるでしょう。
アートギャッベとの出会いは、単なる絨毯の購入を超えて、生活の質を向上させる投資と言えるのです。